苦しくて切ない想いに、


  酔いしれていたワケじゃないの。










ナギと相談した結果、蓮二くんと少しでも仲良くなるのが第一段階だと決まった。
でも、私…あんな頭の良さそうな人と話したこと無いよ…。
考えれば考えるほど溜息ばかり溢れ出す。

今日も学校帰りにナギの家へお邪魔する。
どうやら蓮二くんはテスト期間中で部活が休みなのか、リビングで本を読んでいた。
やっぱり本読んでる姿…素敵だなあ…。
そんなことを考えていると、ナギが思いついた様に私に話しかけてきた。



「そう言えば!今日朝バタバタしてて部屋片付いてないんだった!」
「え?そんなの気にしないから大丈夫だよ?」
が良くてもあたしは嫌なのよ。片付けてくるからここで待っててね」
「ちょ、ちょっとナギ!」



そう言うと、ナギは意味有り気に私にウインクしてみせた。
ああ、そう言うことですか…。
でも、蓮二くん本読んでるし…。
話しかけたりしたら、迷惑じゃないのかな?

ううー…と唸っていると、蓮二くんが面白そうに微笑み、私を見た。
私、今…物凄く情けない顔してる。



さん、でしたよね」
「あ、はい!」
「そこに立っていないで、座ってください。俺が姉にしかられますから」
「え?あ、それじゃあ…失礼します」
「そんなに緊張しないで下さい。俺の方が年下なんですから」
「で、ですよね!」
「…、年下に敬語と言うのは少し違和感があります」
「よし!じゃあ、普通に話すね。蓮二く…あ、柳くんも普通に話してくれて良いから!」
「わかった。では、そうさせてもらおう。名前、別に最初の呼び方で構わない」



蓮二くんの言ってる意味がいまいち理解出来ず、私は頭上に?マークを浮かべていた。
すると蓮二くんはフッと微笑み、私にこう言った。



「名前で呼んでくれて構わないと言っている」



その時の微笑みに、またもや心臓を射抜かれてしまったことは置いといて…。
え!?と聞き返すと、少し機嫌が悪そうに「二度も言わす気か」と言われてしまう。
申し訳なくなって、私は小さくなりながら、精一杯の勇気を振り絞った。



( 蓮二くん、私のことも名前で呼んでくれて良いから。 )