出逢ったときから、わかってはいた。









リビングに案内され、ソファに目を向けると、見知らぬ男の子が座っていた。
ナギに目配せをすると、「弟」とだけ返事が返ってきた。
そのやり取りに気付いたのか、本から目をこちらに向け、弟くんはこちらを見て会釈をする。
つられて私も会釈をし、挨拶をした。



「初めまして!って言います。お姉さんとはいつも仲良くさせてもらっていて…」
「…初めまして、柳蓮二です。姉がいつもお世話になってます」
「もう挨拶は良いから、部屋あがっといで?」
「は〜い!」



私は高鳴る胸の鼓動と、火照る顔を必死で抑え、平然を装い部屋に入った。
やばいかもしれない。
ナギから弟は居ると聞いてたけど、あんなに格好良いなんて。
そりゃあ、ナギが美人だから弟も格好良くて当たり前か。

恋愛経験の少ない私は、友人の弟にドキドキしてしまっていた。
恥ずかしいことなのかもしれないけど、年下には思えなくて。
本を読んでいるときの表情に、参ってしまった。



「ごめんね、愛想悪くって」
「そ、そそそそんな!ぜ、んぜん!」
「…何、…もしかして…」
「いや、その、ナギの弟くんに惚れちゃったとかじゃないよ!?…うん」
「分かりやす過ぎ。蓮二は、今好きな人居るみたいだから止めときな」
「…そーなんだ…」



ショボーンと言う効果音が今の私には適切だろう。
それくらい、自分でも驚くくらい落ち込んでいた。
そんな私を見て、ナギは大声で笑い始めた。
失礼な!と反論をすると、必死に笑いをこらえているのか、肩が震えている。



「別に良いよ?笑っても。友達の弟に一目惚れして勝手に失恋してさ。あたしゃ、笑いもんだよ」
「ごめんごめん!そんな拗ねないでよ。」
「だって、…ナギの弟くん、私のタイプなんだもん。ストライクゾーンど真ん中だよ!?」
「でも…まあ、片思いっぽいし、頑張ればいけるんじゃない?」
「、え?」
「なんか、好きな人って言っても、学校も年も名前すら分からない人みたいだし」
「ほんと!?」
「喜びすぎ。アンタが本気で頑張るなら、協力してやっても良いよ?」



私はすくっと立ち上がり、ガッツポーズをしながらナギに決意した。
付き合うのは無理かもしれないけど、努力はします。
お友達になってみせます!



( 一目惚れ、失恋、そして再び。 )