好き

だからこそ、

我侭


になる。







今日はわたしの大好きな、弦一郎の誕生日。
まあ、誕生日は去年も一緒に過ごしたんだけど、やっぱり特別で。

テスト前で部活も活動停止だったし、今日は絶対一緒に帰ろうね、と約束。
だから放課後、弦一郎がわたしをクラスまで迎えに来てくれた。
…のは良いんだけど。

さっきから女子に誕生日だからってチヤホヤされて、鼻の下伸ばしてる(実際は伸ばしてないけど)
弦一郎を見ながら、わたしは溜息をついた。
そして、わたしの横に座っている幸村くんが声をかけてくる。



の彼氏、随分人気者じゃないか」
「そうみたいね。まあ、弦一郎みたいに素敵な人居ないし、仕方ないわ」
「その割には、さっきから不機嫌オーラ、物凄く出てるよ?」
「…この現場を弦一郎が目撃してヤキモチでも妬いてくれれば儲けものなんだけど」
「本当には性格悪いね」
「あら、幸村くんに言われたくないわ」



にっこりと微笑み返せば、幸村くんも微笑み返してくる。
弦一郎に目を移すと、どうやら女子の波も去っていた様だった。
目が合えば、弦一郎は微かに微笑んでくれた。
(この笑顔は絶対わたしにしかわからない)

妙な自信を抱き、わたしは鞄を持って幸村くんに別れを告げ、弦一郎に近づく。
声をかければ、弦一郎は何も言わずにわたしの鞄を持ってくれた。
(こういうところ、大好き)
クラスの茶化す声も完全無視で(わたしはちょっと嬉しいけど)、学校の外に出る。

いつも通り名前を呼び、手を繋ごうとするが、今日は弦一郎が何も言わず手を繋いできた。
不思議に思いながらも弦一郎の手をキュッと握り、弦一郎を見上げる。



「今日はご機嫌ね」
「む、何故そう思う」
「きっと誕生日で女の子にチヤホヤされたからじゃない?」
「…、怒っているのか?」
「いいえ、全く」
「その、お前を迎えに行ったにも関わらず、他の女子と…」
「だから、本当に怒ってないわよ?」



手を繋ぎながら、わたしは弦一郎の腕に抱きつく。
そしてそのままの体勢で会話を続けた。
弦一郎も「危ないからちゃんと歩け」と怒っていたけど、それも最初だけ。



「弦一郎、誕生日おめでとう」
「…やっと聞けたか」
「え?」
「幾ら大人数に祝われたとて、肝心のに祝ってもらえなければ意味がないからな」
「、弦一郎…。生まれきてくれて、ありがとう」
「ああ」



いつもの表情を保っているようだけど、弦一郎は嬉しそうに微笑んでいた。
そんな弦一郎に「誕生日プレゼントは、わたしね?」と呟けば、真っ赤に染まっていた。
顔が赤いとからかえば、うるさいと怒られる。



「何でもして良いよ?」
「た、たるんどる!…俺が」
「今日はこのまま、弦一郎の家でしょ?」
、…覚悟しておくんだな」



その一言が、何故かたまらなく嬉しかった。
来年も、弦一郎の誕生日をお祝い出来ますように。



( いいえ、来年だけじゃなくて10年、20年先もずっと。 )