「俺、切原赤也!お前、だろ?」 「何で知ってんの?」 「そりゃあ、隣の席だし!よろしくな」 「よ、よろしく…」 伸ばされた手をしっかりと握り、目を合わせた。 これがあたしと切原の出会い。 今でも鮮明に覚えているし、きっと忘れることなんて無い。 そう言えば、アイツとの関係は初めて会った時から全く変わってないな。 初対面にも関わらず、アイツはいきなり馴れ馴れしかった。 思い出せば思い出すほど、アイツとの馬鹿馬鹿しい記憶が脳裏に走る。 一緒に帰った事もある。 一緒に遊びに行った事もある。 切原の家に行った事もある。 あたしの家に切原が来た事もある。 手、だって繋いだ事もある。 何が違うんだろう。 何が、何があたしを辛くさせているんだろう。 それだけ仲が良ければ問題ないじゃない。 切原と話したこと無い子だって沢山居るのに。 それなのに。 ああ、そうか。 女として見られていないから、辛いのか。 切原の笑顔が、男子に向けられている物と同じだから、辛いのか。 態度も、何もかも全て、友達として見られているから。 だから、辛いんだ。 アイツがあたしの事を友達だと思っていても、あたしはそうじゃない。 一人の人間、男として大好きなんだ。 この思いが一方通行だから、辛いんだ。 少しでも気づいてくれれば楽だけど、気づかない。 ううん、気づかせるもんか。 ( 友達じゃ満足出来ないあたしは、馬鹿者です。 ) |