02:記憶。気後れ。気落ちする。






「俺、切原赤也!お前、だろ?」
「何で知ってんの?」
「そりゃあ、隣の席だし!よろしくな」
「よ、よろしく…」


伸ばされた手をしっかりと握り、目を合わせた。
これがあたしと切原の出会い。
今でも鮮明に覚えているし、きっと忘れることなんて無い。

そう言えば、アイツとの関係は初めて会った時から全く変わってないな。
初対面にも関わらず、アイツはいきなり馴れ馴れしかった。
思い出せば思い出すほど、アイツとの馬鹿馬鹿しい記憶が脳裏に走る。

一緒に帰った事もある。
一緒に遊びに行った事もある。
切原の家に行った事もある。
あたしの家に切原が来た事もある。
手、だって繋いだ事もある。

何が違うんだろう。
何が、何があたしを辛くさせているんだろう。
それだけ仲が良ければ問題ないじゃない。
切原と話したこと無い子だって沢山居るのに。
それなのに。

ああ、そうか。
女として見られていないから、辛いのか。
切原の笑顔が、男子に向けられている物と同じだから、辛いのか。
態度も、何もかも全て、友達として見られているから。
だから、辛いんだ。

アイツがあたしの事を友達だと思っていても、あたしはそうじゃない。
一人の人間、男として大好きなんだ。
この思いが一方通行だから、辛いんだ。
少しでも気づいてくれれば楽だけど、気づかない。
ううん、気づかせるもんか。



( 友達じゃ満足出来ないあたしは、馬鹿者です。 )