01:届くことのないためいきを一つ。





、お前上靴どーしたんだよ!」
「うるさい。切原には関係ないでしょ」
「…またサボんのか?」
「サボりたい時だってあんの」
「そっか、…んじゃあ俺が適当に理由言っといてやる」
「、ありがと」


切原に素っ気無くお礼を言い、屋上への階段を駆け上がった。
こんなやりとりを最近ずっと繰り返している。

陰湿な嫌がらせに嫌気が差して、今日もまた屋上で授業をサボッた。
そもそも犯人はわかってるのに何も言えない自分に腹が立つ。
あたしは、ただの弱虫だ。

切原にバレて気まずくなるのが怖くて、何もできない。
嫌がらせを受けてることが友人にバレても、へらへらするだけだった。
いつもみたいにおどけて見せて、大丈夫大丈夫の繰り返し。



「っ、何で…何であたしがこんな目に合わなきゃなんないのよ!」



真っ青な空を見上げて、思い切り叫んだ。
伸ばした足には上靴は無くて、その上靴の在り処はあたしにもわかんない。
一度弱音を吐いてしまうと、人間ってのは止められないものなんだね。

あたしはそのまま目を塞ぎ、ぽつりぽつりと弱音を溢していく。
まるで、満タンになったマグカップから注がれた水が、どんどん音を立てて零れ落ちていく様に。
切原は今何を見て、何を考えて、何をしているのだろう。

そんなこと考えても無駄なだけで、あたしは眠りについた。
チャイムの音が鳴り響き、目を覚ます。
そして大きな溜息をつき、屋上の重たいドアを開けた。



( 少しくらい気持ちわかってくれても良いじゃん。 )