「、お前上靴どーしたんだよ!」 「うるさい。切原には関係ないでしょ」 「…またサボんのか?」 「サボりたい時だってあんの」 「そっか、…んじゃあ俺が適当に理由言っといてやる」 「、ありがと」 切原に素っ気無くお礼を言い、屋上への階段を駆け上がった。 こんなやりとりを最近ずっと繰り返している。 陰湿な嫌がらせに嫌気が差して、今日もまた屋上で授業をサボッた。 そもそも犯人はわかってるのに何も言えない自分に腹が立つ。 あたしは、ただの弱虫だ。 切原にバレて気まずくなるのが怖くて、何もできない。 嫌がらせを受けてることが友人にバレても、へらへらするだけだった。 いつもみたいにおどけて見せて、大丈夫大丈夫の繰り返し。 「っ、何で…何であたしがこんな目に合わなきゃなんないのよ!」 真っ青な空を見上げて、思い切り叫んだ。 伸ばした足には上靴は無くて、その上靴の在り処はあたしにもわかんない。 一度弱音を吐いてしまうと、人間ってのは止められないものなんだね。 あたしはそのまま目を塞ぎ、ぽつりぽつりと弱音を溢していく。 まるで、満タンになったマグカップから注がれた水が、どんどん音を立てて零れ落ちていく様に。 切原は今何を見て、何を考えて、何をしているのだろう。 そんなこと考えても無駄なだけで、あたしは眠りについた。 チャイムの音が鳴り響き、目を覚ます。 そして大きな溜息をつき、屋上の重たいドアを開けた。 ( 少しくらい気持ちわかってくれても良いじゃん。 ) |